運動ニューロン発生初期の細胞死においては、NGFファミリーであるニューロトロフィンが栄養因子として、レセプター型チロシンキナーゼ(RTK)であるtrkファミリーがそれらのレセプターとして運動ニューロンの生存に関与していると考えられている。動物の生体内においてRTKは増殖因子、栄養因子のレセプターとして働き、細胞の増殖・分化・決定など重要な役割を担っているので、運動ニューロンの誘導に関与する因子のレセプターもRTKの可能性がある。 そこで私は運動ニューロン細胞表面を特異的に認識するモノクローナル抗体SC1を用いたパンニング法によりニワトリ胚脊髄から運動ニューロンを精製し、チロシンキナーゼのよく保存された領域に対するプライマーを用いてRT-PCR法を行なった。23種類のチロシンキナーゼが得られ、レセプター型は19種類、非レセプター型は4種類であった。解析を行なった時点で未知の分子であると考えられるものは8種類あった。次にこれら8個のクローンについてin situ hybridizationを行ない脊髄における分布を調べた。クローンtk-14は脊髄において運動ニューロンに強く発現していた。E14の脊髄を用いて作製したcDNAライブラリーをスクリーニングし、全長の配列を決定した。私が単離したRTKは1gドメイン、システイン-リッチドメイン、2つのFNIIIドメインおよびkinaseドメインからなるephファミリーに属し、マウスで報告されているSek(Segmentally expressed kinase)のホモローグであると考えられたので、avian Sekと名づけた。In situ hybridization法による解析からavian Sekは脊髄において腕部と腰部の運動ニューロンに強く、未分化な細胞からなるependimal cell layerに弱く発現していた。Avian SekはE5から発現し始めE6〜E7がピークとなり、E14では検出できなった。 現在までに得られている結果から、avian Sekは、運動ニューロンの初期発生において重要な役割を行なっていると考えられる。
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