今年度はDRGの核内に存在するユビキチンについて研究を行った。ユビキチン蛋白は、アルツハイマー病についての研究から、神経原線維変化を形成しているPHF(paired helical filament)の構成要素であることが知られており、異常蛋白の除去が神経細胞内での主な機能と考えられていた。しかし、私共は、正常神経発生の過程の中で一過性にユビキチンが神経細胞の核内に出現することを免疫組織学的に見い出した。このことから、異常蛋白への結合とは異なる機能を、正常発生過程の神経細胞内でユビキチンが果している可能性が考えられた。そこで、まず、予備的実験から、出生後ユビキチン強陽性となった脊髄神経節(DRG)細胞について、核がユビキチン陽性となる時期や時間経過について詳細に検討した。方法としては、頸髄DRGをユビキチン抗体を用いて免疫染色し、DRG陽性核及び陰性核をもつ細胞数を計測した。その結果、胎生16日に既にユビキチン陽性のDRG細胞が出現しており、この時期の陽性細胞の割合は、約52%であった。胎生19日では、陽性細胞の割合は、約70%、生後0日では85%と高値を示した。その後、割合は減少し、生後3日では約50%、生後1週では約32%、生後2週では約9%、生後3週では約3%生後4週では1%弱であった。以上のことから、DRG細胞の核には、胎生期後期及び出生後数日間にユビキチンが多く存在することが明かになった。現在ウエスタン解析により、DRG細胞核内ユビキチン蛋白の存在様式について引き続き検討中である。
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