ラット脳内で発見された神経細胞封入体、"斑点小体stimoid body"は、アロマテ-ス関連抗原PAX抗体でラベルされ、内側視索前野を中心にした視床下部や内側扁桃体といった生殖機能に関連するエストロゲン結合・受容部位に広く特異的に存在している事が報告されている。本研究課題は、ラットの内側視索前野、分界条床核主核、内側扁桃体核後背側部においてPAX抗体とエストロゲン受容体抗体を用いた免疫組織化学により、実際に斑点小体とエストロゲン受容体とが同一神経細胞内に共存するかどうか、また存在するとすればどの程度の共存率であるのかを、光学顕微鏡・電子顕微鏡観察により明らかにする目的で遂行された。 光学顕微鏡レベルにおける両抗体を用いた二重染色による解析では、PAX陽性の斑点小体を持つニューロンの75-84%にエストロゲンレセプターが共存しており、エストロゲンレセプターを持つニューロンの75-78%に斑点小体が共存するという結果が得られた。免疫電顕法による解析では、斑点小体を持つニューロンの70-80%が斑点小体を共存させているという結果が得られた。これらの結果より、少なくとも内側視索前野、分界条床核主核、内側扁桃体核後背側部においては、斑点小体とエストロゲンレセプターのかなりの部分が共存している事が明らかにされた。この事から、エストロゲンのニューロン下での受容体作用メカニズムの中で、斑点小体とエストロゲンレセプターは、お互いに密接に機能的関わりあいを持っている事が強く示唆された。
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