我々はウシ網膜のcDNAライブラリーにより神経伝達物質トランスポーター遺伝子ファミリーに属する2種類のクローンTP8とTP12を単離した。TP8は完全長のcDNAを含んでいたためTP8を中心に解析を進めた。In situハイブリダイゼーション法を用いてTP8のmRNAの分布を調べたところ、網膜では内果粒層、神経節細胞層に発現していた。また脳内では黒質、腹側披蓋野、縫線核群青斑核などのモノアミンニューロンの存在する核や、赤核や橋網様体披蓋核、橋核、下オリーブ核、外側網様核など小脳と線維連絡を有する神経核や、動眼神経核、外転神経核、三叉神経運動核、顔面神経核、舌下神経核、脊髄の前角などの運動神経核に強い発現が認められた。他に、嗅球、梨状葉、嗅結節、前障、海馬、内側手綱核、視床前背側核、視床下部では室傍核、視索上核、視交叉上核、腹内側核などの部位にもTP8の発現が認められた。これらの遺伝子発現部位より推定される基質[^3H]グルタミン酸、[^3H]アスパラギン酸、[^3HGABA]、[^3H]グリシン、[^3H]ドーパミン、[^3H]セロトニン、[^3H]ヒスタミン、[^3H]コリン、[^3H]アデノシン、[^3H]アスコルビン酸などについてTP8のcRNAを注入したアフリカツメガエル卵母細胞を用いて、その取り込みを検討したがどの基質も取り込まなかった。現在さらに多くの基質について検討中であるが、これまで薬理学的に取り込み機構が存在すると考えられている主な基質についは取り込みが認められないことから、今までに見つけられていない未知の神経伝達物質や神経修飾物質のトランスポーターである可能性が考えられる。
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