(1)まず哺乳動物由来のbeta‐アクチンプロモーターを接続した発現ベクターpBActSTneoBにラット及びヒトのPMP‐22cDNAをそれぞれ挿入したベクターを作製した。これらの発現ベクターが正常に蛋白質を発現することを確認するために、COS‐1細胞を用いてリポフェクチン法によりtransient transfectionを行った。72時間の培養の後、ラットPMP‐22のc末端側12アミノ酸の合成ペプチドに対するポリクローナル抗体を用いて細胞を染色した結果、約20%のCOS細胞がラットPMP‐22蛋白質を発現していることを認めた。次にリン酸カルシウム法を用いてCHO‐K1細胞にトランスフェクションを行い、ラットおよびヒトのPMP‐22蛋白質強制発現細胞株の確立を行った。しかしながらPMP‐22蛋白質は増殖停止因子としての可能性も考えられており、理由ははっきりしないがstable transformantは選択できなかった。従って、再度、beta‐アクチンプロモーター接続の発現ベクターによるtransfectionを行うと共にデキサメサゾン添加によりプロモーター活性の発現がコントロールされるpMAMneoベクターへそれぞれのcDNAを組み込み、現在、stable transformantの作製を行っている。次に予備的な実験ではあるがtransient transfectantを用いて、PMP‐22蛋白質の機能的役割を検討する目的で細胞接着に関する実験を行った。その結果、PMP‐22発現細胞と非発現細胞とは一様に混在し、特に発現細胞同士のホモフィリックな細胞接着は観察されなかった。今後、stable transformantを用いて更に詳しい機能アッセイを検討する予定である。(2)ラットDRGの初代培養系を用いて末梢神経系の発生過程におけるPMP‐22蛋白質の時間的及び空間的発現様式を検討した。生後2日目のラットからDRGを単離し、コラゲナーゼを含む消化液にて細胞を単離した後、カルチャーデッシュにて培養した。幼若シュワン細胞がDRG軸索を認識し接着する過程におけるPMP‐22蛋白質の発現様式を観察した結果、神経軸索を認識していない幼若シュワン細胞はPMP‐22を発現しないが、軸索に接着しているシュワン細胞はPMP‐22が強く発現していることが認められた。
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