脳のサイトカインネットワークで中心的な役割を果たすミクログリアはインターロイキン2(IL2)により増殖促進されるたが、マクロファージには作用がない。これはミクログリアの発生や起源を知る上で重要であると考え、本研究でその性質を調べた。1.IL2受容体の発現はmRNA、タンパクともにリポポリ多糖で活性化したときにのみ見られた。このときリコンビナントIL2の添加によりミクログリアは増殖し、これは抗IL2受容体抗体で抑制された(投稿準備中)。2.混合グリア培養ではリコンビナントIL2の効果は見られず、抗IL2受容体抗体で特異的に染色される細胞は同定できなかった。しかし本研究で確立したIL2受容体mRNAの定量的PCR(後述)ではミクログリアの増大に伴ったmRNAの増加が見られた。3.in situ RNA検出のためにIL2受容体alpha鎖cDNAの薬700bp断片をin vitro RNA発現ベクターにクローニングした。このベクターにより得られるセンスとアンチセンスRNAはフィルター上のマウスIL2受容体DNAやmRNAを検出できた。さらにIL2受容体cDNAに約300bpの欠失を導入して定量的PCRの標準テンプレートとしてIL2受容体alpha鎖mRNAの定量法を確立した。4.精製ミクログリアをリポポリ多糖で活性化するとin situ RNA検出がてきたが、混合グリア培養でミクログリアが増加する時期のin situ RNA検出では特異的な検出が得られなかった。5.脳のサイトカインネットワークでミクログリアが関与するサイトカイン受容体の発現やサイトカインによる調節について調べた(研究発表)。以上の結果からIL2依存的なミクログリアの増殖は正常な周産期にはあまり関与がなく、むしろ炎症などによる病態時における増殖に関与すると考えられる。
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