中枢および末梢の神経伝達物質アセチルコリンの生合成酵素、コリンアセチル転移酵素(ChAT)はコリン作動性ニューロンの機能状態を示す最も特異的なマーカーである。特定のコリン作動性ニューロンがどのようにしてアセチルコリンを伝達物質とする表現型を獲得してゆき、正常時や病態時に、ChAT遺伝子の発現がどの様に制御されているかを解明するためには、ChAT遺伝子のクローニングとその遺伝子発現の調節機構の解析は重要な課題である。 ChAT遺伝子の分子生物学的解析を行い、マウス及びラットChATのプロモーターを含む5'-転写調節領域のゲノムDNAのクローニングに成功し、神経細胞特異的発現を司るプロモーター領域、エンハンサー領域を同定した。またChATのmRNAには3ヵ所のプロモーターからオルタナティブスプライシングにより生じる7種のmRNAが存在することを明らかにした。 さらに、ChAT遺伝子のサイクリックAMP反応性に関与する領域を同定し、サイクリックAMPによるChAT遺伝子の転写調節機構の存在を直接に証明した。
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