研究概要 |
1.下垂体前葉からの黄体形成ホルモン(LH)のパルス状分泌は、視床下部正中隆起部からの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)のパルス状分泌により支配される。LHRHは視床下部の主に内側視索前野で産生されている。個々のLHRHパルスは複数のLHRHニューロンが同時に発火することにより引き起こされるが、この同時発火の機序は全く不明であった。 2.自由行動下卵巣摘除ラットの正中隆起部では多ニューロン発火活動(Multiunit activity, MUA)の上昇(MUAバースト)、すなわち、複数のニューロンの同時の発火活動上昇が、20-30分間隔で見いだされる。このMUAバーストは必ずLHパルスを伴うことから、このMUAはLHRHニューロン群活動を反映していると推測されている。 3.我々は、LHRHニューロンから視床下部内に局所性に分泌されたLHRHがLHRHニューロンの同時発火機序に関与するとの仮説を立て、卵巣摘除ラットの静脈内あるいは視床下部局所にLHRHを外来性に投与し、MUA及びパルス状LH分泌への影響について調べた。 4.50mug/kgのLHRHの静脈内投与は直ちにMUAバーストを出現させた。 5.1ngのLHRHの正中隆起部局所投与も直ちにMUAバーストを出現させ、このバーストはLHパルスを伴うことが確認された。その後、MUAバーストとLHパルスは通常の間隔で出現した。 6.1ngのLHRHの内側視索前野局所投与はMUAにもパルス状LH分泌にも影響を与えなかった。 7.これらの結果から、LHRHニューロンから視床下部内に局所性に分泌されたLHRHは、自身のあるいは隣接のLHRHニューロンを次々と活性化し、これにより、多数のLHRHニューロンが同時に発火することが推測された。また、この機序は少なくとも正中隆起部あるいはその周辺に存在することが示唆された。
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