NDOマウスは自己免疫性1型糖尿病モデル動物であり、その発症要因についてはMHCに連鎖した遺伝子のほか複数の遺伝子の関与が報告されている。一方、人間の糖尿病のあるケースにおいては膵臓のbeta細胞にウイルス(レトロウイルス、サイトメガロウイルス、麻疹ウイルスなど)が持続感染することで、ウイルス傷害性T細胞がbeta細胞を破壊したりMHCの異常発現などによって糖尿病の引き金になることが知られている。NODマウスの膵臓のbeta細胞には内因性レトロウイルスが存在しているが、そのウイルスが糖尿病の発症とどのように関連しているかは現在のところ不明である。しかし、C57BL/6-db/dbマウスにおいて種類の異なる内因性レトロウイルスが症状の悪化を引き起こす原因となっていることが報告されている。このことよりも、NODマウスにおいても糖尿病の発症と関連があると思われる。 現在までの研究成果はNODマウスのbeta細胞由来の内因性レトロウイルスをRT-PCR法やノーザンブロット法によって検出し、その塩基配列の一部を決定した。決定した塩基配列をもとにウイルスの膜蛋白の転写開始部位のアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成し、ウイルスへの影響をin vitro で検討したところ、beta細胞の内因性レトロウイルスの発現は抑制された。また、ジェノミックサザンブロット法により候補となる遺伝子がNODマウス染色体上に14個存在した。そのため、通常の交配試験ではそのウイルスと発症の関連性を調べることは現在の所不可能であった。
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