研究概要 |
ICGNマウスは、近年見いだされたネフローゼ症候群をともなう糸球体腎炎を自然発症するマウスである。ネフローゼ症候群すなわち尿中に血蛋白が濾出する現象は多くの腎疾患でみられ、ICGNマウスでも尿中に多量の血漿蛋白がみられる。一般に、腎における血 蛋白の濾過障壁は腎糸球体基底膜にある二つのbarrier機構であり、このうちsize barrierが障害を受けると高分子蛋白が、charge barrierが障害を受けると低分子蛋白が尿中に濾出する。ICGNマウスでは、発育の極初期からアルブミンを中心とした低分子蛋白が尿中にみられるため、charge barrierがまず第一に障害を受け、ついでsize barrierにも障害が起こることが示唆されている(日本疾患モデル学会記録Vol9,1993)。そこで、charge barrireに障害の起こる時期を明らかにするため、出生直後からの尿蛋白の推移を調べた。その結果、生後2日ですでにアルブミンの尿中排出が認められ、charge barrierは出生直後、あるいは出生前から障害を受けていることが示唆された。また、電顕的にも生後3日で糸球体基底膜足突起の融合、多層性断裂が認められ、出生直後における腎糸球体の変化がICGNマウスにおけるネフローゼ発症にとって重要と考えられた。現在、この時期の固体についてさらに詳しく検討中である。 また、size barrierの崩壊時期を確定するため、高分子蛋白である分子量約15万の1gGと分子量約90万の1gMの尿中への出現時間を調べた。その結果、1gG,1gMともに40日齢前後から尿中に出現しその後漸増することが明らかになったため、size barrierの崩壊は40日齢前後で始まると考えられた。さらに、分子量のかなり異なる1gと1gMの尿中への出現時間がほぼ同時であったことから、size barrierの崩壊は急速に進展すると考えられた。
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