現在我国では、年間に約4千6百万匹弱のマウスが実験に用いられており、マウスを研究に用いている研究者の間ではマウスの臓器・器官の形態や位置を正確に把握しておくため、詳細なマウスの解剖書が必要とされている。しかし従来の解剖書ではマウスが小型なため、大まかな臓器・器官などの記載はあるが詳細について記載されているものがほとんどなく、研究者からより詳細な部位の記載された解剖書が要請されている。そのため著者は従来の解剖学的手法を基に組織学・顕微鏡学的技法を取り入れてマウスの生体標本による詳細なマクロおよび断層解剖アトラスの作製を試みた。 1.オートラジオグラフィー用凍結標本作製方法(カルボキシメチルセルロース(CMC)包埋)に従い、死後変化や固定液などによる組織の変色変形をさけるため生体に近い無固定状態のマウスの全身凍結標本を迅速に作製した。 2.マウスの全身凍結標本をオートラジオグラフィー用の凍結大型滑走式ミクロトームを用いて8mum毎に薄切した。薄切していく方向は輪切り、左側から右側への即断面および背側から腹側への水平断面の3種類とした。 3.薄切後に毎回軟X線撮影装置で撮影し、前後の撮影像マウス全体から観た薄切面の正確な位置を把握した。 4.薄切面を生理食塩水で洗浄し臓器・器官などが生体に近い色調となるまで解凍させた後に医用写真撮影装置を用いて写真撮影を行った。 5.薄切、軟X線撮影および薄切面の写真撮影を繰り返し、各薄切方向別の連続したマウス断面解剖写真を撮影した。 この技法を用いた断面解剖写真整理し各臓器・器官などに解剖学的学名を付して編集することにより、著者は将来、詳細なマウスの解剖アトラスを出版することを希望している。
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