研究概要 |
1.投与細胞株:投与細胞株の特性を知る目的でSCIDマウスにMT-2細胞を投与したところ腫瘍形成が確認された。HTLV-IトランスフォームヒトT細胞株はSCIDマウスで増殖しないと報告されていたが、HTLV-I感染ヒト新鮮T細胞の5から10倍の細胞数で腫瘍形成が可能であり、この両細胞の特性の差の検討は動物モデル作成上でも重要かもしれない。 2.検出系:本研究ではHTLV-Iの移行経路を特定することが主要なテーマであるのでその検出系の確立は重要な意義を持つ。MT-2細胞を試料としてPCR法を検討したところ約100細胞に1コピーのHTLV-Iプロウイルスが存在すると検出可能であり、さらにサザンブロットを併用することにより1000細胞に1コピーまで検出感度を上げることが可能であった。しかし、組織標本中のHTLV-Iの局在を知ることのできるin situ hybridizationのMT-2細胞塗抹標本を試料とした検討では非常に感度が低く今後の検討課題となった。 3.ラットモデル:F344ラット4週令メスおよびオス3匹づつに1×10^7個のMT-2細胞を尾静脈より投与した。さらに投与後1ヵ月目に同様にMT-2細胞を投与した。HTLV-Iの抗体価をゼラチン凝集法(富士レビオ社)で測定したところ、MT-2細胞投与前はすべて陰性であり、1回目の投与後1カ月で640倍、2回目の投与後1カ月で2,560倍から10,240倍まで上昇した。さらに血液よりPCR法によってプロウイルスの検出を試みた。MT-2細胞投与前および投与後1ヵ月ではHTLV-I特異的シークエンスは検出されなかったが、2回目投与後1ヵ月でこれらシークエンスが検出され感染が確認された。現在交配中であり、産児を得次第PCR法により移行経路を検討する予定である。
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