胚の凍結を行なう際、凍結保護の目的としてDMSOが添加される。これは細胞膜に小孔を開け細胞内自由水を浸透圧差により排出し、凍結時の氷結を防ぐためである。DMSO濃度は細胞の表面積と密接に関係し、場合によっては強い細胞毒性を示す結果となるため濃度設定は厳密に行なう必要がある。通常2細胞期胚の緩慢凍結の際は、最終濃度1MでDMSOが用いられている。今回はDMSOの最終濃度1Mと1.5Mで緩慢凍結を行ない、融解時の細胞の生存率と胚の発生を指標として前核期卵の凍結保護としてのDMSO濃度の設定を行なった。 ホルモンでの誘起排卵後自然交配によって得たC57BL/6および(C57BL/6xDBA2)F1の受精卵を用いて上記DMSO濃度での前核期卵の緩慢凍結を行なった。この結果、融解後の卵の状態は1.5MDMSO濃度の方が良好であった。これより前核期卵の凍結操作では2細胞期胚でのDMSO濃度より若干高めがよいことが示唆された。 我々の実験系では通常の前核期卵を用いたDNAインジェクションでの卵の生存率は供試卵総数を100とした場合75〜85%で安定している。この90%以上が2細胞期に発育する。本実験の目的はこの時用いる操作卵に凍結融解前核期卵を用いる有用性の検討であり、以下の比較検討を行い現在も継続中である。 実験にはC57BL/6および(C57BL/6xDBA2)F1 CB-17-scidの受精卵を用いた。また幼若マウスの誘起排卵を行なったが、幼若マウスのホルモン投与のタイムスケジュールは極めて厳密であり今回は有効な受精卵を得ることができなかった。また、DMSO1.5Mでの凍結は前核期卵に有効であると思われるが、融解時のDMSO希釈操作が卵の生存性に影響を及ぼす結果が得られた。1.5MDMSOの凍結培地を用いた場合、融解操作の違いによって卵の生存率にばらつきが見られた。生存率のレンジは10%〜60%であり、それらの80%が2細胞期に移行した。2細胞期胚は偽妊娠♀レシピエント卵管に移植した。着床に関しては現在確認中である。
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