研究概要 |
細胞接着性オノゴペプチドRGDSを合成し、元素分析、アミノ酸分析により合成されていることを確認した。その後、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体RGDS複合体、(RGDS)_4,(RGDS)_8,(RGDS)_nおよび[(RGDS)_8K_4K_2KG]の調製を行った。(RGDS)_nについては、重合度の解析をGPCで行ったところ、平均重合度n=12〜15程度であった。 これらのサンプルを用いて、細胞接着阻害実験を行った結果、(RGDS)_nは、RGDSと比較すると初期の段階から顕著な阻害効果が見られ、3時間後には、約90%の細胞に接着阻害が観察された。オリゴペプチドの繰り返し数が長くなるにつれて活性は、増大傾向にある。培養3時間後においてn=8とn=12〜15の間には、かなりの活性差が見られるが、その原因としては、重合度(分子量)がかなり支配的だと考えられる。以上のことを考慮すると、高い接着活性を発揮させるには、(RGDS)_nの重合度は、最低n=12以上必要だと考えられる。また、(RGDS)_8K_4K_4KG,(RGDS)_4K_2KG,を用いて細胞接着阻害実験を行った結果、先と同様に接着活性の分子量依存性が明らかになった。 RGDSの最安定構造を分子力場法をもちいて推測した所、(Arg)NH・・・CO(Ser),(Arg)CO・・・NH(Asp),(Asp)C^<delta>O・・・HO(Ser)の3ケ所の水素結合により安定化されておりArg-Gly部分で折れ曲がり構造を形成している。さらに、RGDS分子の水溶液中でのNMR測定を行いC-H,N-HプロトンおよびNOEスペクトルを観察し、得られた情報から原子間距離を考慮して、水溶液中で最も存在確立が高いと思われるコンホメーションを推定した。その結果、Arg,Asp,Serの各アミノ酸側鎖は、同一方向を向いており、この様な側鎖の配向が細胞接着レセプターの認識を促しているものと考えられる。以上のことが今年度の研究より明らかになった。
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