研究概要 |
血管内の血流構造に基づく力学的諸因子が血管内皮細胞と内膜平滑筋細胞の形態や機能に何らかの影響を与え、動脈硬化成因に関与していることが広く認められている。しかし、これらについての十分な検討はなされていない。 本研究では、局所血流構造が動脈硬化の発症・進展に与える影響を解明するために、先ず、動脈硬化好発部位の詳細な血流構造の解析を行った。ついで局所血流構造が血管内皮細胞及び内膜平滑筋細胞の形態・機能に対して影響る影響を共焦点型レーザ走査顕微鏡(カ-ルツアイス社製LSM-10UV,1991年度文部省私学助成により本学園ME学教室に設置)を用いて観察・解析した。 実験動物を対象にして、動脈硬化好発部位である大動脈-腎動脈分岐部血管の血流構造を、我々が開発した20MHz-80ch超音波パルスドプラ血流速計で精密に測定した。共焦点型レーザ走査顕微鏡を用いた血管内皮細胞及び内膜平滑筋細胞の三次元的な観察は、1)内皮細胞内ストレスファイバをrhodamin phalloidinで染色した標本、2)核のDNAをビスベンジマイドで二重染色した標本)、3)蛍光色素でラベルした低比重リポ蛋白を静注後、圧灌流固定した標本を用いて行った。 その結果、ずり応力の低い分岐部では、ストレスファイバの密度で疎で、内皮細胞と核の配列は不規則であることが示された。一方、ずり応力の高い末梢部では、ストレスファイバは密となり、内皮細胞と核は血流方向に沿って整然と配列していた。Ac-LDLの血管壁内分布は、腎動脈分岐部尾側より頭側に密で、著しい濃度差を認めた。 これらを総括すると、局所血流構造の相違は血管内皮細胞の構造に大きく影響するだけでなく、LDLなどに対する血管内皮細胞の物質透過性を変化させることが示唆された。
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