研究概要 |
生産基盤の弱い過疎といわれる山村では,一人暮らし老人や老夫婦のみの世帯が大幅に増加し,ところによっては,集落が数多く消滅しつつある。ところが、農家高齢者,特に過疎の高齢者が、どこに、また誰(子供や施設)のところに、どういう状態のときに移動し、そこでどのような生活をし、終末の死を迎えているのかはまだ明らかになっていない。 このような状況のもと、農村高齢者の移動状況と終のすみかなどを把握するために、供給源である農村地域と移動先であると考えられる大都市地域を調査することによって、農村高齢者のあるべき生活像と行政の課題を明らかにすることをねらいとした。研究の実績は、以下の通りである。 (1)東北の農村(過疎地域)と四国の農村(過疎地域)における離村高齢者の状況を把握するために、(イ)愛媛県上浮穴郡柳谷村と(ロ)山形県最上郡戸沢村の2箇所に出向き、予備調査を実施した。その結果、愛媛県柳谷村では、子供が居住している県郡の松山市と大阪市周辺に移動していることが、また、山形県戸沢村では、一人暮らし老人そのものが少なく、しかも高齢者の移動はきわめて少ないことが明らかになった。 一方、受け皿となる大都市(周辺)高齢者の転入や移動状況及び彼らの生活状況を明らかにするために、東京都足立区と都下東久留米市において、平成6年2月〜3月において調査を実施している。詳しい分析は4月移降であるが、都内足立区での転入は都区内や周辺からの移動であるが、東久留米市においては都区内や周辺からの移動とあわせて、地方からの一人暮らし老人や夫婦のみの高齢者の移動が多くみられた。それは、高齢者側だけでなく子供側の条件にも大きく影響されており、貴重な結果が示唆された。
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