我が国の手工教育論では、モデルとしてスロイド手工とフランス手工の教育書が参考にされ、スロイド手工は一般陶冶の目標から、フランス手工は職業陶冶の目標から我が国の手工教育の目標が論じられる傾向があった。手工講習会における上原六四郎の手工教育論では参考にされた手工教育書は、スロイド手工とフランス手工を比較したベルギーの手工教育書が主であったことが示すように、当時、世界的に問題とされていた手工教育の教育目標の論議、すなわち一般陶冶と職業陶冶の目標の関係を初等教育における手工教育がどのように位置づけたらよいかの問題が主なテーマであった。したがって、一般陶冶の目標からはスロイド手工の教育書が多く参考文献として取り上げられ、職業陶冶の目標からはフランス手工の教育書が多く取り上げられた。手工教育の内容については手工教育の実質陶冶の目標を強調するフランス手工の内容の文献が参考にされ、主として手工教育の目標はスロイド手工に、内容はフランス手工から影響を受けて、我が国の手工教育が成立したといえよう。
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