研究概要 |
本研究では、2,4,6-トリス[ビス(トリメチルシリル)メチル]フェニル基(Tb基)を新規な立体保護基として用い、Tb(Ar)M:(M=Si,Ge,Sn,Pb)のような14族金属元素の原子価欠損型活性種の速度論的安定化を行い、これを利用した新規な含14族金属元素有機化合物の合成への応用を検討した。 1)まず、出発物質として二価の金属ハロゲン化物が入手容易なゲルマニウム、スズ、鉛の系については、TbBrから容易に調製可能なTbLiに対し、GeI_2、SnCl_2、PbCl_2を作用させることでTb(X)M:X=Cl or I)に変換した後、次いでこの中間体にメシチルリチウムや2,4,6-トリイソプロピルフェニルリチウム等の嵩高い他のアリールリチウムを反応させることで、いずれの系においても対応する金属二価化学種[Tb(Ar)M:]が溶液中安定に合成できることを見出した。 2)ケイ素の系においては、SiF_4とTbLiからTbSiF_3より数段階をへて合成したTb(Ar)SiX_2を基質に用い、これとリチウムナフタレニドとの反応によりTb(Ar)Si:の生成を検討し、種々の新規構造を有する有機ケイ素化合物の合成に応用した。中でも、これまでにない高い安定性を有するケイ素-ケイ素二重結合化合物であるジシレン[Tb(Mes)Si=SiTb(Mes)](Mes=メシチル基)の合成単離、構造解析を行うと共に、ジシレンへの熱的なシリレンの解離反応を初めて見出したのは、本研究で得られた大きな成果の一つである。 3)また、上記の反応により合成した14族金属元素二価化学種について、各種スペクトルの測定による系統的な性質の比較を行うと共に、エピカルコゲニド類や単体カルコゲンとの反応を詳細に検討することで、対応する14族金属元素-カルコゲン元素二重結合化合物を安定に合成することに成功しそれらの特異な反応性を明らかにした。
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