第3周期以降の元素、特に第15族元素を含む新規有機化合物の合成とその物性の評価を目的として、以下の結果を得た。 (1)重ヘテロ元素化合物を含む非線形光学材料の設計、合成、評価:最近の理論的研究によれば、パイ電子系と電子供与基、吸引基のクーロン積分は余り差がないほどまた、パイ電子系とこれらの基の間の重なり積分が小さいほど非線形性が上がるとされている。この条件を満たす化合物として、電子吸引基としてリン酸エステル、電子供与基としてアミノ基を含む化合物を合成しそのSHG活性を測定し、かなり大きな活性を示すことを明らかにした。 また、電子吸引基と電子供与基を含むパイ電子系が共鳴せず直交している化合物は、吸引波長を短波長側に保ったまま、β値を大きくできることに着目し、これらの化合物に電子吸引基としてリン酸エステル、供与基としてアミノ基を導入した化合物の合成を行った。非線形光学活性については現在検討中である。 (2)分子内の酸素原子が空間を通じて強くビスマス原子と相互作用をしている分子の合成を行い、その物性とX-線結晶解析、170NMR、理論計算の研究を行い、酸素とビスマス原子の相互作用が物性に与える影響について明らかにした。 また、この特徴を利用すると、大環状ポリエーテルが酸無水物とジオールをビスマス化合物存在下加熱するだけで簡単に収率よく合成できることも示した。この方法を用いれば、以前には5-6%の収率でしか得られなかった化合物が、60%程度の収率で得られる。 また、これらの化合物は、選択的な脱水反応に用いることもでき、二級カルボン酸存在かで1級カルボン酸のみをエステル化あるいはアミド化する事ができる。
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