細胞分化に係わるシグナル伝達が開始される細胞性粘菌の集合期には、核と微小管をつなげるクロスブリッジ構造が出現することから、微小管関連蛋白質(MPAPs)の分析法を応用して、この構造を構成する分子の検索を目指した。MPAPs画分をSDS-PAGEで分析したところ、予想に反して集合期に特異的なバンドは検出されなかった。しかし約42、52、55、59、72、75、95、220、280kDaおよびそれ以上の一つの高分子の10成分が、増殖期と集合期細胞に供通して見られた。大量の細胞上清を用いて得られた各成分をウェスタンブロッティングおよび部分アミノ酸配列分析することにより次のような結果が判明した。 1.55kDaは、加えたブタ脳微小管が部分的に脱重合したチューブリンである。 2.アクチンおよびアクチン結合蛋白質が検出された。42kDaはアクチン、95kDaはアクチン架橋蛋白質であるαアクチニンであり、75kDaはアクチンキャッピング機能を持つHSP70であるらしい。 3.アクチンやその結合蛋白質が微小管に結合することは知られていない。免疫-ネガティブ染色法で検討したところ、抗アクチン抗体のシグナルは微小管に直接ではなく、末端部に結合した構造に検出された。これが+端であれば、膜直下における微小管とアクチン繊維の関係の観点から興味が持たれるので、今後検討したい。 4.280kDaはヒトケラチンと一致していた。このバンドは再現性良く検出され、しかもケラチンの分子量は64kDaである。単なるヒト成分の混入なのか実際にヒトコラチンに似たものなのかを継続検討したい。 5.他の成分についてはまだ十分な情報が得られていない。現段階ではクロスブリッジ構造分子を確定するにいたっていないが、今後各成分の抗体を作成し、細胞内分布を確認することにより確定できると予測している。
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