研究概要 |
対向する2つの流れが合流すると同時に,合流流れに直角な同一2方向へ流れが分岐する特異な部位である脳前交通動脈の合流分岐部で,クモ膜下出血に至る動脈瘤発生に対する幾何形状に起因する流れ構造,特に流れの急変により発生する壁せん断応力の変化を検討した。実際の脳動脈瘤発生のレントゲン写真を元に,2枚のアクリル板からなる合流分岐モデルを作成し,その中間面に直径0.5mmの白金電極を埋め込んだ。壁せん断応力を,酸化還元系の電解液を用い電気化学的手法により測定した。基本的な実験条件は,分岐後の両枝管の流量を等しく維持し,合流流量比の変化による合流点回りの壁せん断応力分布,および管軸を含む中間面の流れをレーザシート法によりCCDカメラを用い撮影した。 現在,壁せん断応力および中間面の流動形態を解明されたが,対象とした流路が合流と同時に分岐するため,人体の血管構造の奥深さを痛感すると同時に当初予定の上述の方法に加え,壁近傍の速度分布を非接触のレーザドップラ流速計により検討している。主な結果は,以下のとおりである。 (1)等合流流量比の場合,流れは最も安定するか,合流点回りでは対称な旋回流が発生し,この点回りで流れは大きく変化する。等流量比から数パーセントの若干の違いの生じた場合には流動形態に極端な変化が生じ,流れの把握が極めて難しい。 (2)単純な分岐流と異なり,合流部回りには複数個の対の旋回流が発生する。 したがって,前交通動脈部の動脈瘤発生は,壁せん断応力の空間変動と相関付けられることが示された。
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