研究概要 |
本研究を着想させるに到った異常現象をいくつかの観点から実験的に検証する事を試みた.これまでに得られた結果は,以下のようにまとめられる. 1.異常現象を発見したCu_3Auを用いて,変態温度以上の種々の急冷温度から種々の急冷速度で不規則相を凍結したのち等温焼鈍を行い,異常現象の発現する度合を明らかにした.その結果,当初異常が発見された等時焼鈍時に限らず,等温焼鈍時にも明瞭な欠陥形成現象が確認された.急冷温度が高い程異常は大きく,一方急冷速度は速い方が異常が顕著である.また同一の急冷温度・急冷速度を用いた場合は,焼鈍温度が高い程異常の発現する時間は短いことが明かとなった. 2.Cu_3Auと同じくL1_2規則構造に変態するAu_3Cdを変態点以上の800Kから急冷し,室温から750Kまで等時焼鈍を加えながら陽電子消滅寿命測定を行った.その結果凍結空孔の消滅および熱平衡空孔の形成が明瞭に捉えられた反面,相変態に起因すると考えられる異常な原子空孔の形成は認められなかった. 以上の実験事実をもとに,相変態に伴う原子空孔形成の条件およびメカニズムの解明を進めている.今後規則・不規則変態以外の相変態についても研究を進め,相変態誘起原子空孔の全容を明らかにしたい.
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