研究概要 |
希土類および遷移金属のペロブスカイト型酸化物はMHD発電、燃料電池、触媒あるいはガスセンサ材料として工学的に重要な化合物である。通常、多くの複合酸化物は、成分酸化物を混合し、高温で焼成して得られるが、この方法では、生成物は単一相が得られにくい。原子レベルで均一な化学組成を持つ希土類および遷移金属のペロブスカイト型酸化物の微粒子を作成する目的で、本研究では、ヘテロ金属錯体を出発材料としてペロブスカイト型酸化物の微粒子の作成を試み、錯体の熱分解挙動、得られた微粒子の形態について調べた。 1)ヘテロ金属錯体の合成 希土類(Ln=La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Yb)および遷移金属(M=Fe,Co)の組み合せからなるシアノ錯体を希土類の硝酸塩および遷移金属のカリウムシアノ錯体から合成した。Ln=La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Hoについては相当するヘテロ金属錯体が再現性よく得られ、カリウム含有量は0.05重量%以下であった。しかしながら、Ln=Er,Ybでは組成が一定のヘテロ金属錯体は得られなかった。得られたヘテロ金属錯体の組成は{Ln[M(CN)_6nH_2O}_Xで示され、M-CN-Ln結合によって3次元ネットワーク構造を有している。 2)ヘテロ金属錯体の熱分解挙動と粒子形態 La[Fe(CN)_65H_2O}_Xの熱分解挙動を調べたところ、脱水は50度付近からはじまり250度から300度の領域でまず一定になる。さらに温度を上げるとシアノ基の分解が始まり、LaFe(CO_3)_nO_m(n+m=3)の組成のものが形成される。約600度において微粒子の形成が見られるようになりペロブスカイト型酸化物が形成される。この熱分解挙動において単独酸化物,Fe_2O_3,La_2O_3,の形成は認められない。生成したペロブスカイト型酸化物の粒子サイズは、熱分解温度に依存しており、LaFeO_3の場合、620度で処理したものでは、表面積は約23m^2/gであり粒子サイズは50nmであった。表面積は、処理温度が高くなるにつれシンタリングがすすみ、1000度で処理したものでは約3m^2/gである。 3)現在、合成に成功したほかのヘテロ金属錯体について熱分解挙動と粒子形態を調べており、ペロブスカイト型酸化物の生成挙動が用いた希土類および遷移金属の種類によって系統的に変化していくことを突き止めている。また、得られた粒子を用いて薄膜をつくり電気的特性をN_2,O_2,NO_2雰囲気で測定したところ、NO_2ガスセンサ材料としての可能性が大であること、再現性、安定性にすぐれたp-型半導体性を示すことが確認されている。今後、さらに詳しく検討、解析を進め、ガスセンサ材料、水素製造用光触媒、燃料電池用材料としての応用について展開する予定である。
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