研究概要 |
発育速度の異なるSS,RRおよびLL系統のウズラにおける筋肉組織のカルパインおよびカルパスタチン活性値を測定すると、カルパインおよびカルパスタチン活性値のいずれにおいても系統間差が見られた。すなわち、カルパイン活性値はSS系統>RR系統>LL系統の順に高く、一方、カルパスタチン活性値はLL系統>RR系統>SS系統の順に高い(Maeda et.al.,1991)。筋肉蛋白質の分解に関わるカルパイン活性値の序列が筋肉蛋白質分解速度の系統差と一致し、カルパインの阻害因子であるカルパスタチン活性値の系統間の序列がカルパイン活性値の序列と逆であることは、体重選抜により生じた筋肉蛋白質分解速度の系統間の違いはカルパインおよびカルパスタチン活性値の系統間のちがいによることを示唆している。このようなカルパインおよびカルぱスタチン活性値の遺伝差異は鶏における卵用種と肉用種の間においても観察された。 カルパインおよびカルパスタチン活性値における系統間差の発現の上流には遺伝子の発現に差異が存在することが予想される。そこで、ノーザンブロットハイブリダイゼーションにより、m-RNA量を評価し、さらに、抗体を用いたウエスタンブロティングにより、蛋白質の生産量を確かめた。その結果、m-RNA量の発現量はLL系統>RR系統>SS系統の序列を示した。カルパインのm-RNA量の系統差は酵素としてのカルパイン活性値の序列とは全く逆であることが判明した。m-RNA量の系統間の序列と酵素活性としてのカルパイン活性値の序列が逆転していることがいかなる理由によるのか現時点では不明である。これらの結果は、m-RNAへの転写効率やm-RNAからポリペプチドへの翻訳効率さらに細胞内の活性化制御の各段階おいて系統間差が存在することを示唆している。
|