研究概要 |
酵母細胞の細胞壁は、水不溶性の丈夫なβ-1,3-グルカン系の高分子糖鎖で覆われている。それ故、酵母プロトプラスト細胞を同系列の高分子糖鎖で包み込めば、プロトプラスト細胞はより安定化すると考え、プロトプラスト細胞の再生率を調べた。その結果、水溶性のβ-1,3-グルカンであるシゾフィランが、酵母プロトプラスト細胞の再生率を約千倍近く向上させることが分かった。 β-1,3-グルカンの特長は、三本鎖構造(トリプルヘリックス構造)をとることである。酵母プロトプラスト細胞の安定化には、シゾフィランの高次構造が非常に重要であることを示したが、このことは、他の結合様式を持った高分子糖鎖では、酵母プロトプラスト細胞の安定化に寄与できないことを意味する。β-1,3-グルカンには、免疫能力を賦活化する能力のあることが知られている。この生理活性の発現は、β-1,3-グルカン特有の高次構造(トリプルヘリックス構造)と深く関係する。本研究で新たに発見された、酵母プロトプラスト細胞の再生率向上効果は、β-1,3-グルカンの高次構造の点で、免疫賦活活性の発現機構と類似することが分かった。しかし、さらに、高度な高分子糖鎖の機能利用を追求するためには、これらの高分子糖鎖のレセプター部位に関する研究をしなければならない。 酵母プロトプラスト細胞の安定化に関した研究で、細胞壁多糖と類似の高分子糖鎖に効果のあることが明らかとなったので、次ぎに、植物細胞で調べてみた。植物の種類は万とあるため、ここでは非常によく研究されているタバコの細胞について、酵母の場合と同じような考え方で実験を行った。その結果、水溶性のβ-1,4-グルカンであるサクシノグリカンやザンサンガムにタバコのプロトプラストを安定化させる傾向の高いことが示唆された。
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