研究概要 |
【目的】ウシ副腎皮質細胞を、substance Pによって刺激した際に、cortisol分泌に先行して特異的に発現する分子量240kDaの新規なcalmodulin結合タンパク質の構造と機能を明らかにする目的で、このタンパク質の精製とcDNAライブラリーの作成を行なった。 【実験方法】初代培養ウシ副腎皮質細胞にsubstance P(10^<-8>M)を37℃にて30分間作用させた後、テフロンホモジナイザーにてhomogenizeし、2,000xg,4℃,5分間の遠心により、未破壊細胞と核とを除去した。この上清を100,000xg,4℃,30分間超遠心を行ない,得られた上清を細胞質分画とした。これを、Sephadex G-200 column chromatographyによってゲル濾過し、分子量240kDa付近のfractionを回収した。限外濾過による濃縮を行なった後、calmodulin-Sepharoseを用いたaffinity chromatographyを行ない、目的の分子量を持ったcalmodulin結合タンパク質を回収した。一方、ウシ副腎皮質細胞のcDNA libraryを作成するために、ウシ副腎皮質細胞からguanine-hot phenol法によりtotal RNAを抽出し、oligo-dT columnを用いてpoly A-RNAの精製を行なった。このpoly A-RNAをreverse transcriptaseによりcDNAとし、λgt10phageにin vitro packagingを行なった。 【結果・考察】Sephadex G-200 column及びcalmodulin-Sepharose affinity columnだけでは、目的とするタンパク質の純度を60%以上にすることはできなかった。現在、イオン交換カラムによる精製条件を検討中である。一方、このタンパク質を副腎皮質細胞のcell hogomenateに添加したところ、5μg/ml以上の濃度でCa^<2+>及びcalmodulin依存性にcortisol合成を惹起した。現在の段階では、Edman分解によるアミノ酸配列の決定を行なうにはタンパク質の純度・量ともに不足しているため、更に精製操作を繰り返している。一方、ウシ副腎皮質細胞のcDNA libraryの作成は完了しているが、これは、resting cellのlibraryであるため、substance P刺激下に誘導されるmRNAのcDNAが十分に含まれていない可能性もある。そこで、substance Pを作用させた副腎皮質細胞からmRNAを抽出して電気泳動で分離後、目的とするタンパク質合成を開始させるmRNAを含む分画を回収し、これを用いたdifferential hybridizationや発現クローニングが行なえるよう、mRNAの精製と分画を行なっているところである。
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