研究概要 |
1)モノクローナル抗体を用いた検討(方法)慢性肝炎の肝内浸潤リンパ球と末梢血リンパ球のT細胞レパトワを以下のモノクローナル抗体を用いて検討した。抗Vα2,Vβ5.1,Vβ5.2+5.3,Vβ6.7,Vβ8 family,Vβ12.1,Leu4(CD3),Leu2a(CD8),UCHL1(CD45RO)。肝内浸潤リンパ球の解析は酵素抗体間接法を用いて、また、末梢血リンパ球はflow cytometryにて検討した。(結果)肝内浸潤リンパ球の解析では,Vβ5.1陽性細胞の比率は、C型慢性肝炎で18.9±12.3%(平均±標準偏差)であり、B型慢性肝炎(5.7±6.0%)や自己免疫性肝炎(1.3±1.2%)より有意に(P<0.05)高率であった。Vβ5.1陽性細胞は主として門脈域に局在しており、その分布はUCHL1あるいはLeu2a陽性細胞と類似していた。肝炎の程度の指標とされているHAI scoreとVβ5.1陽性細胞率との間には、負の相関関係を認めた。一方、他のV領域に対する抗体の陽性率の平均はいずれの疾患においても5%以下であった。また、末梢血リンパ球の解析では、各種V領域陽性細胞の平均比率は、いずれの疾患でも5%以下であり、健常者との間に有意差は認められなかった。2)PCR法を用いた検討(方法)C型慢性肝炎9例、B型慢性肝炎3例の肝組織よりRNAを抽出し、cDNAを合成した後、各Vβに特異的なプライマー25個、および内部コントロールとしてα鎖の定常領域のプライマーを用いPCR法を施行した。増幅産物はアガロースゲルにて電気泳動し、各Vβ RNAの使用頻度を算出した。(結果)C型慢性肝炎では、Vβ1、Vβ5.1、Vβ10の頻度が、またB型慢性肝炎ではVβ1、Vβ3、Vβ10の頻度が高い傾向を示した。特に、C型慢性肝炎9例中6例においてVβ5.1の頻度は最も高く、B型慢性肝炎よりも高値であった。以上の解析により、C型慢性肝炎の肝内において、末梢血あるいは他疾患の肝内と比べ、Vβ5.1陽性細胞が有意に多く浸潤していることが明らかとなった。同細胞陽性率は、HAI scoreと負の相関を示したことより、肝局所において免疫抑制的に働いていることが示唆された。
|