研究概要 |
これまでの研究で、我々は消化器組織に発現しているチロシン脱リン酸化酵素の遺伝子クローニング行い、1991年Tonks らのよって発表されたPTPH1遺伝子と同一の遺伝子をクローニングした(Tumor Bio1.,13:180-186)。PTPH1遺伝子産物の構造は酵素ドメインの他に細胞骨格結合蛋白質に相同性を持つドメインを有していた。本研究ではPTPH1遺伝子産物の解析と細胞骨格結合蛋白質が数多く存在する肝細胞の細胆管におけるチロシンリン酸化レベルの検討を行った。PTPH1 mRNAの発現を種々の細胞株で検討したところ、発現レベルは低く、また、すべての細胞株に発現を認めubiquitousな発現パターンを示すことが明らかとなった。また、分化誘導剤であるsodium butyrate存在下での培養で発現増強を認めることより、少なくとも細胞の増殖的には抑制的に働く可能性が示された。(Int.J.Cancer,55:947-951,1993)。一方、肝細胞におけるPTPH1遺伝子産物の発現を明らかとしたが、癌化における遺伝子異常の存在は見いだされなかった。(J.Gastroenterol., 29:727-723,1994)。PTPH1遺伝子産物の抗体を作製し、肝細胞における局在を検討したところ、Western blot にてbile canalicurus 分画にバンドを認めた。しかし、胆汁うっ滞起因薬剤であるクロールプロマジンの投与によってラット初代培養肝細胞の細胆管周囲におけるリン酸化チロシンレベルの上昇はみられず、本薬剤においては細胆管周囲のチロシンリン酸化レベルと胆汁うっ滞の関連は明確でなかった。現在、他の胆汁うっ滞起因薬剤において検討を継続している。
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