研究概要 |
摘出肝灌流実験:ラットの肝臓を摘出し灌流する系を用いて、カルシウムイオノフォア(A23187)、タウロケノデオキシコール酸(TCDCA)により肝細胞を障害させ、Calpain lnhibitor-1(Ac-L-L-nL-al,Cl-1)を灌流液に添加し肝細胞障害の抑制効果を検討した。A23187 10nmol/min,3分間投与後の灌流排泄液のLDH値はCl-1投与群ではコントロールに対し214.6%と上昇し、著明に肝障害が増悪した。またTCDCA0.5mumol/min投与下において灌流開始50分後のLDH値はコントロール72.06±16.05に対し、Cl-1投与群では125±74.4と、増悪傾向を示したが、統計学的に有意差は認めなかった。このことからA23187またはTCDCAにより惹起される肝細胞障害モデルにおいて,肝細胞壊死をCl-1は抑制せず、むしろそれを増悪する傾向にあることが明らかとなった。次にカルパインの肝細胞における役割について検討した。上記実験系にTCA1mumol/min投与したとき、Cl-1共存下では胆汁流量は基礎値より48.6%増加し,胆汁酸排泄量も12.1%と軽度増加した。またリン脂質排泄量は基礎値より44.1%と著明に減少した.その結果,Cl-1は胆汁酸とそれに伴うリン脂質排泄の解離を惹起させ,Cl-1投与終了後に一過性の胆汁酸排泄量の上昇(基礎値より14.6%)がみられた。HRPの胆汁中排泄はコントロール群,Cl-1投与群ともに二峰性のピークとして認められたが,Cl-1投与群ではコントロール群に比べ微小管依存性の2nd.peakが半減した。従ってCl-1はvesicle transportを著明に抑制することが明らかとなった。すなわちCl-1が胆汁酸分泌に伴う胆汁中へのリン脂質排泄量を著明に抑制し,また胆汁中HRP排泄量を減少させたことから,カルパインは胆汁分泌機構におけるvesicle transportに関与していると考えられた。
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