研究概要 |
ラット遊離還流肺標本において、左右肺動脈を分離、左肺動脈を選択的に一時間遮断することにより、両側肺を同一条件にて換気下に、左肺に選択的虚血/再還流障害を引き起こすことのできるモデルを完成した。このモデルにおいては、肺摘出のための操作、還流・換気条件等は左右肺均等に作用するため虚血・再還流の影響を純粋に観察できる。このモデルにおいて、(20%O2-5%CO2、或は95%O2-5%CO2混合気)にて換気下に左肺を1時間虚血にさらすと、左肺は肺胞から拡散により豊富な酸素供給を受けているにもかかわらず、同様な肺水腫を来したことから、本モデルでの虚血/再還流障害は組織低酸素に起因するのではなく、還流が遮断されること自体に起因することを解明した。95%O2-5%CO2混合気でも同様な障害が起こり、肺胞からの酸素供給の増加は、虚血/再還流障害を軽減しないことから、好気性代謝産物の蓄積が本障害の機序であろうと推測した。Superoxide dismutase,catalase,indomethacin,allopurinol,deferoxamine等を還流液に加えてから、虚血にさらしても虚血/再還流障害を軽減できないことから、細胞外に放出されるreactive oxygen metabolitesの関与に関してはさらなる検討が必要と考えている。
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