研究概要 |
昨年度,Down's症候群児を対象とし,歯周病関連菌-Porphylomonus gingivalis,Actionobacillus actinomycetemcomitans,Fusobacterium nucleatum,Treponema denticola,Prevotella intermedius,Selenomonus sputigena,Streptococcus mitis-について,対象児より得られた血清中の抗体価より,年齢による変化ならびに歯肉炎との関連性を検討し、AaとFnが低年齢時におけるDown's症児の歯肉炎の発症と重症化に強く関連することが示されるとともに,思春期における歯肉炎とは,Pg,Sel,Miの関連性が強いことが明らかにされた。この結果に基づき今年度は,特に歯周病と関連の深いAa,Pgについて,健常者を対象に,3歳未満児から思春期まで合計40名を対象に,採取した歯垢中にみられるAa,Pg両者の菌数の検討ならびに,血清中の抗体価について検討を行った。菌数については,Slot Immunoblot Assayにて,その菌数の概数を0から3までのカテゴリーにスコアーとして分類することで評価し,抗体価については,ある時間内のELISAの変化,すなわち,ELISA rateにより評価した。その結果,低年齢においては歯肉炎の発症とAaとが強い関連性を示し,逆に思春期においてはPgと歯肉炎との関連性が強く示された。また,両菌ともに3歳未満よりその存在が指摘された。これらの結果から,本研究の目的であった小児期からの歯周病の予防学的対応の確立への糸口として,Aaが管理上のパラメーターとして有効であることが示されるとともに,思春期を境にPgとの関係に注目し,成人型の歯周病への移行を予期しながら予防していく姿勢が必要且つ有効であろうことが示された。今後の課題として,すでに低年齢で存在するAaとPgがいかに発症との関連をもつのか,その決定要因についての更なる検討が必要となろう。その他,Fnなど関連の深い菌との関係についての検討も必要であろう。
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