研究概要 |
物理的エネルギーにより導かれた励起状態に関する研究は熱,光反応を中心として展開されている.一方,mass fragmentationは構造解析を目的として考察されて来た.近年,高速熱分解(FVP)法,レーザー励起等の高エネルギー反応が注目されるようになり,熱,光,電子の三種の励起手段の関連につて検討が活発に行なわれている.電子衝撃による励起,及び解裂過程を精密に解析するため,電子衝撃による気相反応装置を試作した.この装置はいわば試料を回収できる質量分析計の様なもの(正確にはイオン源)であり,これにより解裂生成物を直接取り出すことができる. 本研究ではこの反応装置の開発を中心として検討をかさね,装置の改良,反応条件の検討を行なってきた.特に,本装置による有機化合物の励起過程が熱によるものではなく電子衝撃により進行することを確認することに注意がはらわれた.即ち,すでに電子衝撃励起が進行することの確かめられているプラズマ状態での反応と比較し,反応速度論的考察より本装置の性能を検証した.更に,本装置を用いていくつかの電子衝撃反応に特有と思われる反応を行ない有用な知見を得た.本装置の開発研究により反応生成物を直接取り出すことが可能となり、より精度の高い反応機構解明を行なうことができるようになった.更に,本装置に電場,磁場等の分析装置を付加し、非破壊的質量分析を行なうことができる.実際,質量分離されたイオンを破壊せずに減速し,トラップする装置の試作を計画中である.
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