研究概要 |
三種の選択的リチウム吸着剤,すなわち,LiMn_2O_4を前駆物質としそれからリチウムを抽出することにより得られる吸着剤(MnO_2(Li)),Mg_2MnO_4を前駆物質としそれからマグネシウムを抽出することにより得られる吸着剤(HMnO(2Mg)),およびLiSbO_3を前駆物質としそれからリチウムを抽出することにより得られる吸着剤(アンチモン酸;HSbO_3),につき,それらを合成し,それらのリチウム同位体選択性を調べる研究を行った。いずれの吸着剤も^6Liを選択的に取り込み^6Li選択性であった。MnO_2(Li)では、MnO_2(Li)の示すリチウム同位体効果が前駆物質の合成条件およびそこからのリチウム抽出条件と相関していることが見いだされた。すなわち,同位体効果は前駆物質からのリチウム抽出時のマンガン溶出率と弱い負の相関性を示し,前駆物質合成時のLi/Mn比と負の相関性を示した(Li/Mn比が0.5〜0.8の範囲)。得られたリチウム同位体に関する分離係数の最大値は25℃において1.014であった。HMnO(2Mg)では,リチウム同位体効果は前駆物質からのマグネシウム抽出率と強く相関しており,抽出率が上がると小さくなってしまうことが見いだされた。マグネシウムの抽出法をさらに検討する必要があろう。HSbO_3では,MnO_2(Li)やHMnO(2Mg)よりもさらに大きなリチウム同位体効果が観測されたが(25℃における最大値1.025),リチウムの脱着が難しく,今後の検討課題である。本研究により,いずれの吸着剤も,イオン交換法によるリチウム同位体分離の研究において,現在最もよく使用されたいる有機のイオン交換体に比べ,数倍大きなリチウム同位体効果を示すことが明かとなったが,それらを優れたリチウム同位体分離剤とするためにはまだまだ解決すべき点も多く,今後も研究を継続していく必要がある。
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