研究概要 |
磁場閉じ込め核融合炉において,ダイバータ自体を液体金属の液膜流とする「液体金属ダイバータ」は,真空容器内部に損傷を与えず高除熱性能が得られるなど優れた利点を有していると考えられる.そこで,厳しい電磁・熱的条件における「液体金属ダイバータ」の電磁・熱流体力学的挙動を調べるための基礎研究を行った。 はじめに,液体金属ダイバータの液体金属の候補であるガリウムを水銀で模擬し,液体金属機械式ポンプ,オリフィス流量計,円管流路のテスト部,上部タンク,冷却部からなる液体金属循環装置を製作した.核融合炉相当の強磁場下における液体金属の流動・伝熱特性を調べるため,液体ヘリウム冷却ソレノイド型超伝導磁石(ボア径75mm)の中心に同軸にテスト部円管を設置し,最高6テスラの磁場を流路の管軸に平行に印加した.その結果,液体金属のMHD圧力損失係数は非磁場下の値に比べて2〜5倍になるが,従来の横磁場の値に比べると4桁以上低いことがわかった。磁場によるピンチ効果のため磁場入口部で加速損失が生じ,出口部で減速による負の損失が現れた。熱伝達係数は,液体金属のレイノルズ数が低い場合には磁場の増加と共に減少し,6テスラにおいて非磁場下のおよそ60%になるが,液体金属のレイノルズ数が高い場合には磁場の増加と共に増加し,約1〜2テスラで非磁場下の110%程度に達した後,減少して,6テスラにおいて非磁場下のおよそ60%になることがわかった。 次に,直径50mm,高さ200mmのステンレス製円筒容器内にアーク放電プラズマを形成させ,液体金属液膜流表面に高熱負荷を加えると共に,上記の超伝導磁石のボア中心に設置して強磁場を印加する実験を実施した。今後,この実験によりプラズマと液体金属の蒸発および電磁力の相互作用を明らかにする。
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