研究概要 |
血小板の産生機序,産生調節機序の遅れは,研究試料となる巨核球の不足によるところが多く,申請者は巨核球系のin vitro分化モデル系の確立をMEG-01と亜株MEG-01s細胞株を用いて検討し,次のような研究成果を得ている。 MEG-01とMEG-01s細胞から遊離される血小板様粒子の産生量の増強を種々の分化誘導物質で試みた結果,DNA合成を阻害する物質(アフィヂコリン,BudR,FudR,ヒドロウレア,mAMSA)が最もよい効果を示し,10〜50倍の増強を示した。遊離された粒子を分画し,粒子分画中の生細胞含有率をMTT法で測定すると,それらの約50%が代謝活性をもつことが示された.さらに同定は(1)サイズが3〜5μm,(2)特徴的な細胞骨格,(3)血小板特異抗原(GPIIb/IIIa)の存在で決定した。血小板の生理活性を示すトロンビンによる形態変化,凝集活性は非常に低かったが,血小板活性化マーカーであるp-selectin(GMP-140or CD62)は,トロンビンによって20%の発現率の増強があり,血小板機能の1つである血小板内顆粒からの放出活性と類似の機能が認められた。 MEG-01あとMEG-01s細胞の粒子形成と粒子の遊離機構を調べた。MEG-01とMEG-01s細胞は成熟巨核球で観察されている細胞質の長い突起であるproplateletに似た細長い突起を形成する。このことはMEG-01も巨核球の血小板産生と類似の機構で粒子を形成し,遊離していることが示唆された。これは巨核球系細胞株で細胞質突起の伸張と血小板様粒子形成を示したはじめての報告である。 以上の結果から,MEG-01とMEG-01s細胞は巨核球と同じような機構で血小板様粒子を産生しうる細胞株であることが明らかになった。
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