研究概要 |
(方法)SUS316L,Co-28Cr-8Mo(F75,F799),Ti-6Al-4Vについて繰り返し負荷環境下で腐蝕試験した。腐食環境に(1)0.9%NaCl(P02=150mmHg),(2)0.9%NaCl(P02=30mmHg),(3)0.9%NaCl+10%BSを用いた。繰り返し負荷は400MPa,周波数は2Hzに固定した。直径10mm,長さ120mmの金属棒を中央部直径6mm長さ30mmのアレー型に加工し表面あらさRaを0.01mum以下に鏡面仕上げした。SUS316L,Co-28Cr-8Moは30%硝酸溶液中に1時間浸漬し一様な不動態膜を形成させた。上記の腐食環境中に金属試験片を晒し,ステンレス鋼とコバルト合金は-1Vから+1.5V,チタン合金は-1Vから+8Vまで準平衡状態を保ちつつアノード分極し,続いて初期電位までカソード分極した。アノード分極において不動態域から過不動態域に遷移する電圧を不働態膜破壊電位とした。各試験は同一条件で5-10回行った。(結果)腐蝕試験後のSUS316L,Ti-6Al-4V表面にはピツトが発生した。Co-28Cr-8Mo表面は全面的に腐蝕した。F75とF799の間には特に差異は見られなかった。不動態膜破壊電位はTi-6Al-4Vを除くすべの金属で,無荷重で高溶存酸素下でもっとも高い値を示した。これをコントロールとして荷重,溶存酸素濃度,血清の影響を統計的に検討した。SUS316Lはすべての条件で破壊電位は有意に低下した。(p<0.01,ただし無荷重,血清添加0.9%NaClではp<0.05)F75は低溶存酸素,400MPa荷重下および400MPa荷重,低溶存酸素,血清添加0.9%NaClで有意に低下した。(前者はP<0.01,後者はp<0.05) F799は低溶存酸素,400MPa荷重下で有意に低下した。(p<0.01)またそれ以外のすべての環境で有意に低下した。(p<0.05)チタン合金については環境による影響をほとんど受けないことが分かったが,逆にコントロールよりも高い破壊電位を有意に示すものもあり,その原因が何に起因するかについては今後の検討が必要と思われた。
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