研究概要 |
ヒトにおける視覚の情報処理過程を検討した。本研究は脳における視覚の情報処理の流れを、非侵襲的方法(動的脳電図法,双極子追跡法)を用いて分析した。 正常人について単純図形(白黒の市松のパターン,右半側視野刺激)を見たときの視覚誘発反応を記録した。記録装置にはBrain Atlas III superを使用した。記録電極は頭皮上20カ所に設置し、基準電極は頭部外平衡型電極とした。動的脳電図法では、刺激後70msec頃に刺激側脳半球の陽性帯電,刺激後100msec頃に後頭部陽性帯電(P100),刺激後130〜145msec頃に対側の側頭部の陰性帯電(N145),刺激後150〜220msec頃に頭頂〜後頭部に陽性帯電(P200)が得られた。これらの主要成分の電位発生源を双極子追跡法により分析した。P100成分の電源は刺激側の脳半球に存在し、100msecを過ぎると対側の脳半球に移動した。N145成分の電源は対側の側頭領域で検出された。P200成分の電源は頭蓋深部の広い範囲に存在し、ベクトル方向は頭頂から後頭を指していた(眼科臨床医報印刷中)。次に個体間および左右半側刺激の再現性を検討した。P100成分の脳電図および電位発生源の再現性は100%であった。N145成分の脳電図および電位発生源の再現性は60〜100%であった。P200成分の脳電図は個体内で経時的変化を示す例が多く、頭頂陽性帯電(75〜100%)から後頭陽性帯電(62〜80%)に変化した。この間、電位発生源が頭蓋深部に安定的に検出できた例は25〜50%であり、後期成分に至るほど分散する傾向を認めた(第31回神経眼科学会)。研究代表者らは、視覚に関する認知反応(P30)の電位発生源が頭蓋深部から安定的に検出される事を明らかにしている。これらの結果より、形態の情報は後頭葉中枢から後頭連合野,側頭連合野に伝達され、その後大脳深部構造物を中心とした広い範囲で処理された後、大脳辺縁系に集約されると推察する。
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