研究概要 |
3〜11万気圧、1400℃の温度における、Ni,Co,Mnの金属鉄とカンラン石、輝石、マグネシオウスタイト間の分配係数の測定、及び金属鉄中に水素が固溶することによる分配係数への影響について実験を行った。その結果、分配係数に対する金属鉄中への水素の固溶の影響はごく僅かであったが、圧力の上昇に伴い、Ni,Coの分配係数は減少し、Mnの分配係数は増加することが観測された。つまり、どの元素も圧力が上昇すると分配係数が、1に近づく傾向が認められた。また、Cr,V,In,La,Tm,Scといった元素の分配挙動については、鉄との交換反応が定義できないため、厳密に分配係数の圧力変化を決定できなかったが、やはり圧力の上昇と共に分配係数が1に近づく兆候が示唆された。 地球型惑星において観測されている元素存在度を比較すると、小惑星のようにサイズが小さく、内部圧力も小さい天体の遷移金属元素存在度は、惑星の始源物質である炭素質コンドライトの元素存在度から大きくずれているが、地球のように大型で内部圧力の高い惑星の遷移金属元素存在度は、炭素質コンドライトのそれに近くなっている。このような傾向は、本研究により観測された元素分配係数に対する圧力の効果と一致した傾向を示している。このため、地球型惑星の形成の初期段階において起こったと考えられている核とマントルの分離、及びその後の惑星進化の過程における遷移金属の分配挙動に対して、分配係数に対する圧力の影響が、重要な役割を果たしていたと考えられる。地球の上部マントルにおいて観測されている元素存在度も、超高圧下における珪酸塩鉱物と金属間の元素分配を考慮することによって、説明できる可能性が考えられる。
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