研究概要 |
アスパラギン残基(Asn)の脱アミド反応は,酵素等の関与しない,純粋な化学反応で生じるタンパク質の翻訳後変化である.現在では,ほとんどのタンパク質に生理的条件下で時間のみに依存して生じることが知られている.細胞老化における,そのいわば分子内時計としての役割と影響を明らかにするために,赤血球膜タンパク質protein4.1とankyrinの脱アミド部位を決定するとともに,脱アミド組み換え体タンパク質を作製して機能の変化を検討した.Protein4.1のプロテアーゼ消化断片ペプチドの質量分析,アミノ酸組成・配列解析により,Asn502とAsn478の2カ所で脱アミドが生じていることが明らかになった.このうち、Asn502の脱アミド反応は赤血球の加齢・老化にともなって極めてゆっくりと進行する反応であり、実際の分子量変化が1.0でしかないにも関わらず,電気泳動上移動位置の明瞭な変化(2,000)を起こすことが判明した.この結果は,脱アミド組み換え体の発現実験で確認した.脱アミドを受けた分子と受けていない分子とでは,特に脱アミド部位の近傍でトリプシン感受性部位に相違が認められ,分子構造が変化したものと推定された.しかし,膜骨格タンパク質群を除去した赤血球膜への結合能に関する限り,両者に有意の差は認められなかった.Ankyrinについては,そのN-末ドメインの特徴的なANKリピート構造中の2番目と8番目の配列に脱アミドが生じていることが明らかになった.現在,その機能的変化を検討中である,
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