研究概要 |
1.2か月齢と24か月齢の雌C57BLマウスの坐骨神経切断後のワーラー変性に伴うシュワン細胞増殖をin vitro autoradiographyを用いて検討した結果、若年成熟マウスでは切断後3日目にピークを有する増殖活性を示した。しかし、老化マウスではシュワン細胞の増殖がおよソ1/10と高度に低下し、かつそのピークも切断後5日目と遅れており、末梢神経損傷後の軸索再生遅延と関連を有するものと思われた。2.未処置の老若マウス坐骨神経からシュワン細胞を分離し15%FBS加DMEMを用いて8日間培養したところ、老化マウスでは若年成熟マウスの半分以上の増殖活性を示した。このことは、老化動物のワーラー変性に伴うシュワン細胞増殖の遅延が老化したシュワン細胞固有の増殖能の低下に由来するものだけではないことを示している。3.老若マウスから高純度のシュワン細胞を大量に得る目的で、後根神経節からChi et al(1993)の方法に基づき実験を行なった。これらのシュワン細胞の増殖能を種々濃度のFBS、bovine pituitary extract,fibroblast growth factor,platelet-derived growth factorを用いて調べた結果、老化動物では若年成熟動物よりも増殖活性が低値を示すことが判明した。4.障害神経へのマクロファージの侵入が老化動物で遅延していることが,Mac-1を用いた免疫細胞染色の結果明らかになった.5.Silicaを腹腔内投与した2カ月齢マウスでは,坐骨神経切断後のマクロファージの侵入が遅れ,シュワン細胞の分裂増殖も遅れる傾向がみられた.6.マウス・シュワン細胞のcyclic AMPに対する増殖・分化に対する影響をラットのそれと比較したところ、マウスではより低濃度が好条件となることが判明した。7.神経損傷時のシュワン細胞増殖に大きな影響を有するマクロファージの機能が年齢によってどう変化するかを調べる基礎実験として、胸腺筋様細胞から分泌される増殖・la発現因子を検討している。その結果分子量10万の均一な物質に抽出された。8.Krabbe病の実験モデルであるtwitcher mouseのシュワン細胞の機能障害病がin vivoよりもin vitroでよく評価されることを示した。
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