研究概要 |
遺伝情報が正確に伝達されることは、生物にとって最も重要な事の一つであり、DNA合成の校正はこれと深く係わっている。DNApolymerase alpha,beta,gammaは3′->5′exonuclease活性を分子内に持たないが、別の分子である3′->5′exonucleaseとともに校正しながらDNA合成を行う事を示唆してきた。本年度は、この校正に関与する3′->5′exonucleaseの細胞内存在様式、DNApolymerase alpha等との係わりを明らかにし、これらの点が加齢によって変化するか否かを検討することを目的とした。DNApolymerase alpha活性の高い術後48時間のrat再生肝を材料とし、核分画と細胞質分画をLieberman等の方法で分離した。さらに、この核分画を超音波破砕、遠心して核質分画を得た。核分画の庶糖密度勾配遠心法や核質分画及び細胞質分画のカラムクロマト法での解析により、核中に3′->5′exonuclease及びDNApolymerase alphaとも存在している事が明らかになった。低塩濃度での庶糖密度勾配遠心では、3′->5′exonuclease及びDNApolymerase alphaは同一画分に存在するので、両者は直接または別の蛋白等を介してゆるくassociateしていると考えられる。一方、これら3′->5′exonuclease及びDNApolymerase alpha,deltaともPhosphocelluloseカラムクロマト法で分離出来る。これは、3種の酵素共、異なる分子である事を示し、校正に係わる3′->5′exonucleaseはDNApolymerase deltaではないかという疑問を打ち消すものである。 同様の結果が、生後24月齢rat再生肝でも見られた。このことは、DNApolymerase alphaと3′->5′exonucleaseの細胞内存在様式は加齢に伴う変異出現に関係なく、すでに報告したように、DNApolymeraseの忠実度の低下や、3′->5′exonuclease量の低下によるDNA合成での校正活性の低下が、加齢に伴う変異出現に関与すると考えられる。
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