研究概要 |
骨芽細胞から産生・分泌される成長因子のうちautocrine/paracrine作用を発現する最も重要な因子はインスリン様成長因子(IGF-I)であるといわれている。そこで本研究においてdonor ageに伴う骨芽細胞のIGF-I産生量の変動を調べた。またIGF-Iによって合成が促進されるといわれている基質蛋白のコラーゲン産生についても調べた。加齢と伴に骨折が多発する大腿骨で、しかも手術時に得られやすい骨膜から樹立したヒト骨芽細胞を使った。10-12PDLの細胞を活性型ビタミンD_3(1,25(OH)_2D_3)およびα-グリセロ燐酸存在下で、10日または20日間培養し、次のことを明らかにした。 1.培養液中に遊離されたIGF-I量を、単位DNA量あたりで比較する未処理の細胞においては、61才以上の高齢者の細胞では比較的高値を示した。 2.このIGF-I産生量は、1,25(OH)_2D_3に処理によって、高齢者の細胞では増加は見られずむしろ抑制的であったが、10才および52才の患者の細胞では有意に増加した。 3.1,25(OH)_2D_3による反応性の違いが考えられたが、donor ageに伴う1,25(OH)_2D_3レセプターのmRNAレベルに著しい変化は見られなかった。 4.IGF-IのmRNAレベルは、88才の高齢者では減少していた。現在のところではIGF-ImRNAの発現量が低いのか、安定性が悪いのかは不明である。 5.コラーゲン蓄積量はdonor ageとともに増加した。これは、加齢に伴ってmRNAの発現が増加するのではなく、分解抑制活性が増加することによることが判明した。
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