研究概要 |
本研究では,文化財関連の資・史料について,名古屋大学年代測定資料研究センターに設置されているタンデトロン加速器質量分析計を用いて精度の高い^<14>C年代測定を可能とするための基礎研究を行なった. まず,ごく少量の炭素で^<14>C年代測定を可能とするために,炭素試料のグラファイト化の装置を開発した.この結果,グラファイトを用いれば,年代値の測定誤差をほぼ±40年まで小さくすることができた.次に,年代測定試料炭素の同位体分別を補正し,より正確な^<14>C年代値を求める方法を確立した. また,いくつかの文化財資料,特に古文書紙片について,同一試料から複数個のグラファイト試料を合成し,それらの^<14>C年代値を独立に測定し,年代値の一致度すなわち再現性を調べた.この結果から,ただ一回の測定で得られる年代値の信頼度は統計的にみて不確定さがあるため,正確度の高い年代測定のためには最低3回程度の測定を繰り返す必要があることが明らかとなった.さらに諸外国で既に得られている,樹木年輪による^<14>C年代-暦年代の較正方法について検討し,それを日本の文化財資料に適用しその有用性を確かめた. 昨年度に引き続き,下記の文化財資・史料について正確な^<14>C年代測定を実施した. (1)広島県三原市御調八幡宮所蔵の一切経古紙片,経軸,経函,一木彫男神座像 (2)今昔物語集(鈴鹿本:京都大学所蔵)のとじ糸 (3)古代鉄,鉄剣,鉄製像 (4)シルクロード関連資料 (5)その他:昌全寺仏像,諸桑の古船,パキスタン仏陀座像,韓国絹製絵画,占トの骨,など これらの資料について得られた^<14>C年代値を樹木年輪に基づく較正曲線を用いて暦年代に較正した年代値は,それらの資料の史学的な推定・予想年代とほぼ一致している.また,贋物の判定にも^<14>C年代測定が有効であることが示された.
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