研究概要 |
平成5〜6年の研究を通じて,以下の3つの段階で成果をあげることができた. 1)定常的発振現象である母音音声波形の不規則性に関して従来多くの検討がなされているが,本研究では決定論的非線形予測子の構成を通じてこれと決定論的カオスとの関連を調査した.具体的には,日本語母音音声「あ」に対して微差分方程式系の学習を行い,獲得された安定解が幾何構造および周波数特性において真の音声と良く一致することを提示した.これにより,母音音声に関する決定論的カオスの関連性,音声信号処理に対する決定論的手法の適用可能性が示唆できたと考える.本研究は,IJCNNおよびTOYOTA Conferenceの国際シンポジュームにおいて発表されている. 2)微差分方程式系を用いた決定論的非線形短期予測手法の研究を通じて,「未知力学系が小自由度なカオス的力学系である場合,そのコントロールパラメータ(分岐係数)および関数形が未知であってもであっても,幾つかの信号のみから定性的に等価な係数族を求めることが可能である」という新しい逆問題(分岐図再構成問題)とその解法を提案した.初期の実験では2自由度差分力学系の2および3係数族に対する係数族同定可能性を検証した.本研究は,Fuzzy Logic and Neural Networksなどの国際シンポジューム,Physica Dなどの雑誌に発表されている. 3)カオス的センサーに対する認識系構築に適応するため分岐図再構成問題を連続力学系へと拡張した.特に,実データにおける観測ノイズが提案手法にいかなる影響を与えるかを調査し,提案手法がノイズに対してロバストであることを提示した.現在,この実験結果に関して発表を準備中である.
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