研究概要 |
粘菌変形体細胞内を枝状に広がっているゲル糸の主構成物質はアクチン繊維束である。これが細胞内にあるミオシン分子と相互作用し、ATPを加水分解して得たエネルギーを使いゲル糸の弛緩一収縮を起こしている。この変形体内に光を透過させ、細胞内のactive elementsゲル糸の協同的振舞いを高感度倒立実体顕微鏡を通し高感度カラーカメラで捕らえ、その画像をデーターレコーダーに記録し、後に再生し画像処理システムにより粘菌変形体の空間的ダイナミクスを調べる。現在以下のような実験、解析を行なっている。 1.結合振動子系の定常的挙動の観測 1cmΦ程に拡がった粘菌変形体を上記システムで観測する。この時変形体内に分布しているゲル糸の定常的挙動を32×32のメッシュに分け、各場所での収縮一弛緩の時系列データを解析している。実際的には、時系列データとその時間に関する一階、二階微分量を求め、各データーの時間・空間相関、フーリエ解析、ポアンカレマップ等を調べ、粘菌変形体の定常状態における結合振動子系としての特性を調べている。 2.粘菌変形体の外部刺激に対する応答 外部から種々の刺激(ステップ及びパルス的温度変化,化学物質等)を局部的に与えると、変形体は刺激部から逃避或いは接近という個体運動をする。この過渡過程での挙動を上記と同様にして時系列データを解析し、結合振動子系としてのダイナミクスと機能との関連性を調べている。この場合、個体運動としての機能を如何なる物理量で定義するかが重要な問題となるが、現段階では各場所の時系列データの時間二階微分量の空間勾配を局所的駆動力とし、全体の総和を個体運動という自己組織化のオーダーパラメーターとして解析している。
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