研究課題/領域番号 |
05836022
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
非線形科学
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
青木 和徳 神戸大学, 工学部, 助教授 (80112077)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1993年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | カオス / 周期倍分岐 / 決定論的ノイズ増幅 / カオスメモリー / 半導体素子 / 非線形電子回路 / GaAs / p-i-nダイオード |
研究概要 |
当該研究は半導体素子ならびに電子回路にみられるカオス現象を利用し、決定論的ノイズ増幅とカオスという立場からカオスの応用を追求したものである。二つの応用を検討・考察した。 その一つはDeisslerとFarmerによって理論的に提案された決定論的ノイズ増幅器であるが、本研究ではその可能性をバルク半導体の高純度n-型GaAsを用いて検証した。測定は液体ヘリウム温度でおこない、自由電子による中性不純物の衝突電離雪崩過程で現れるS字形電流・電圧特性のヒステリシス領域をVo+Vac sin(2πfot)の形で交流駆動した。例えば、fo=1.83MHz、Vac=190mVに固定し直流電圧を4.8Vから下げてゆくと周期倍分岐が観測されるが、周期1と周期2の分岐点でラジオ波が増幅される現象がみられた。ラジオ波の周波数frとしたとき、決定論的ノイズ増幅はfo±fr近傍の周波数で同調して起きる。増幅されたラジオ波の電気信号は周期2がトーラス変調された形で観測された。この決定論的ノイズ増幅は衝突電離雪崩過程で形成される電流フィラメントの外部ノイズに対する極めて敏感な性質による。この現象にたいして、カオス温度を定義しノイズ増幅率を調べた。その結果、周期1と周期2および周期2と周期4の分岐点でカオス温度が異常に増加(数十〜数千度)し、ノイズ増幅率は10^3〜10^5と見積られた。この現象は室温で動作可能なSi p-i-nダイオードおよびGaAs p-i-nダイオードをアレー状に加工することにより増幅器としての応用が可能であることがわかった。 もつ一つは、カオス動作をおこなう非線形電子素子をN個並列結合・集積化したカオスメモリー素子への応用である。p-i-nダイオード構造をアレー状に集積化し、これを交流動作させることによりメモリーとしての機能を持たせることが可能である。N個のエレメントは互いに同相もしくは逆相で振動し、その位相関係を利用する。具体的には、バラクターダイオードを用いたLRC非線形電子回路(N=16)によりメモリー機能の検証をおこなった。カオス状態および周期状態で各エレメントの抵抗間の電位差をオペアンプに入力し、二つの8セグメントLEDでメモリー動作を確認した。素子間の同相および逆相の関係は外部ノイズに対し極めて安定で、いわゆるロバストな性質があることおよびパルス電圧を加えてメモリーの切り換えが可能であることがわかった。これにより、パターンマッチノ機能を持たせればカオスメモリー素子として応用できることを提言する。また、これらの素子をニュートラルネットワークに応用することも現在検討中である。
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