M.ハイデガ-の芸術論を本年度、集中的に研究した成果は、二本の論文(「研究発表」の項参照 一本は投稿準備中)にまとめられたが、その内容を要約すると、以下のようになる。 1.『存在と時間』(1927年)から論文「芸術作品の根源」(1930年代)へのハイデガ-自身の思想的展開の問題の究明。その際、とくに「作品」概念の重要性が強調され、「作品」が真理の場所として、「芸術作品の根源」において記述されることを示した。 2.ハイデガ-芸術論の持つ問題点。ハイデガ-は芸術の本質を詩作に求め、民族の言葉に根ざしたものと考える。このように、芸術の根底にある種の土着性Bodenstandigkeitを見出すような考え方が、はたして現代の芸術にもあてはまるのかどうかが問われた。 その外、芸術における「本来性」とは何か、という問題など、ハイデガ-の解釈を通じて、徹底的な対決が企てられた。
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