本萌芽的研究においては、音声自動訓練装置を用いて、第2言語(外国語)学習時における音声知覚獲得過程の分析を目的とした。まず、アメリカ人を対象に日本語長母音・短母音・促音の知覚学習をおこない、音声知覚訓練システムを稼動させるとともに、音声知覚の1獲得過程を記述分析した。これまでの研究において音声知覚は固体発生過程で獲得するものとの視点が明確でなかった点を考慮し、その学習過程をまず記述することとした(音声知覚研究における学習パラダイム)。そのため、プリテスト、ポストテストに加え複数の中間テストを用いる訓練デザインを用意した。テストでは十分な般化が観察され、比較的困難とされる当核課題に対する本訓練の優れた学習効果が示されるとともに、特徴的な獲得過程が明らかになった。 また、当初計画ではアメリカ人による日本語母音訓練を実施する予定であったが、知覚実験の結果、アメリカ人にとって日本語5母音の知覚はかなり容易であり、訓練の必要性が認められないことが明らかになった。 一方、日本人を披訓練者にした場合の、効果的な動機づけ・学習パラメータに関しては、日本人大学生を対象にインドネシア語子音、中国語子音の知覚学習を実施し、知見を得た。 日本人による英語母音知覚訓練を実施する場合、英語は日本語に比べ母音の数が多く、正書法的問題を無視できない。しかし、この問題に対して有効な音韻カテゴリー研究法とされる"categorial discrimination"法は、操作的に明確でない箇所を有する。本研究では、九官鳥の母音知覚を題材に、"categorial discrimination"法の理論的意義を検討した。
|