「関心・意欲・態度」の評価はこれまで、認知的側面のような客観的テストによっては把握できないとされてきた。しかし平成3年度に改訂された指導要録の中で、今や現場の教師にとっては評価せざるを得ない現状にある。そこで本研究では、著者の博士論文の動機づけモデルにもとづいて「関心・意欲・態度」の客観テスト(Emotional Domain Inventory)の作成とその妥当性の検討を試みた。その結果、 1.A.「関心 1)教科内容に対する「興味度」、2)授業に対する「楽しさ」、3)教科全般に対する「知的好奇心」 B.意欲 1)教科に対する「動機づけ」 C.態度 1)教科に対する「態度」 の3つの下位尺度からなる、インベントリ-が小学1年生〜6年生について、全教科用が作成された。 2.妥当性の検討のため、客観的指標(教師評定・学業成績)と各下位尺度との相関係数が求められた。結果、学業成績とはr=.16〜.21といった弱い正の相関が見いだされ、教師評定とはr=.18〜.32といった中くらいの相関が認められた。また教師評定と学業成績はr=.42と最も強い相関を示していることから、教師は成績の良い子を「「関心・意欲・態度」があると認知していることが推測される。したがってここで作成されたインベントリ-と学業成績が必ずしも高い相関でなく、弱い関連があるところに、知識中心の現在のテストによる能力評価とは別に、「関心・意欲・態度」を評価することの意義が存在するのではないかと思われる。 3.さらに外部基準による妥当性の検討のため、自己の能力についてのエフイカシ-(認知的動機づけ)と授業中の気分(情緒的動機づけ)について、各下位尺度との相関を見たところ、エフイカシ-とはr=.25〜.33の相関がみられ、気分ともr=.15〜.18の弱い相関が認められ、本尺度の妥当性は認められたといえよう。 4.全国の小学校からの評価結果をまとめ、インベントリ-の標準化を行った。その結果、評価基準がAの者が全体の約60〜50%、Bの者が約50%〜40%、Cの者が約10%と分布することによって判定基準が設けられた。 5.以上の成果をもとに、田研出版よりEDI(Emotional Domain Inventory)として出版するに至った。あわせて手引きが作成された。
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