個人特性としてのあせりやすさについて、課題の難易度を操作しながら、行動面・情動面にそれぞれどのような影響を与えるかについて検討した。 “あせりやすさ尺度"調査を76名の大学生に実施し、その中からあせり高得点者20名、低得点者20名を被験者とした。 実験計画としては、課題要因(易課題、難課題)とあせりやすさ要因(あせりやすさ高、あせりやすさ低)の2×2の4条件を設定し、個別に実施した。実験課題として、漢字字形素統合課題を使用し、易課題では2つ、難課題では3つの漢字字形素から新たに1つの漢字に作り直すもので、5分間にできるだけたくさん問題を解くことであった。解答終了後、問題を解いていたときの情動について、質問紙調査を行った。 行動面への影響として、課題の漢字正答数について2要因分散分析を行い、課題要因において有意差が示された。したがって、課題の難易度は、適切に操作できたことが確認された。一方、個人特性としてのあせりやすさは、行動面には影響を及ぼしていないことが明らかとなった。 情動面への影響として、情動合計得点について2要因分散分析を行い、あせりやすさ要因において有意差が示された。したがって、課題の難易度ではなく、個人特性としてのあせりやすさが、情動面に影響を及ぼしたことが明らかとなった。 本研究をまとめると、個人特性としてのあせりやすさが、情動面に影響を及ぼしていることがわかる。これまでの研究のように、課題の難易度は情動面に影響が生じていないことが特徴的である。課題の内容がそれぞれ異なっていることもあるが、個人特性としてのあせりやすさの方が、課題の難易度よりも影響力が大であると考えるべきであろう。
|